対策しないと怖い!「二次相続」の落とし穴

二次相続の相続税対策

「一次相続」「二次相続」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか?

夫婦はどちらが先に亡くなっても、その後に必ずいつかは残された配偶者もお亡くなりになります。

夫婦どちらかが先にお亡くなりになった時の相続を「一次相続」、その後に配偶者の方が亡くなられた時の相続を「二次相続」と言います。

今回は、この二次相続に関してのお話をしたいと思います。

 

忘れてはいけない「二次相続」

夫婦の場合、年齢的に近いという方も多いので、旦那さんが亡くなられて数年後に奥さまがお亡くなりになるということも多くあります。

相続税対策というのは、一次相続と二次相続の両方を考えて、一次相続での遺産分割をすることが非常に重要です。

以下のケースで具体的にご説明致します。

 

「とりあえず法定相続分で」分割されたケース

法定相続分割お父さんが亡くなりました。

遺言はありません。

「財産分けの話をすると少し揉めそうな雰囲気があるので『とりあえず法定相続分で』財産分けしようと思います…」

そんな話もよくあるのですがこんな事例もあるのでよく考えて下さい。

十数年前にAさんご一家のお父様が亡くなられてた時、当時は相続のことも良く分からないので、「とりあえず法定相続分で」すべての財産を分けておられました。

家族構成

Aさんご家族は以下のような家族構成になっていました。

  • 父(死亡)
  • 長男(東京で別居)
  • 次男(大阪で両親と同居)

財産

お父様の遺された財産は自宅と現金などの金融資産でした。

  • 自宅 8000万円
  • 金融資産 4000万円

 

法定相続分での分割

Aさんご一家のお父様が亡くなられてから、お母様と長男、次男で下記のように遺産を分割されました。

 

父が亡くなった時の遺産分割(一次相続)

お父様が亡くなられて、以下のように法定相続分通りの遺産分割をおこなりました。

  • 自宅 母1/2 長男1/4 次男1/4
  • 金融資産 母2000万円 長男1000万円 次男1000万円

自宅のように実際に分割して分けることが出来ないものは、「共有」といって、一つのものを複数の人で所有している状態にします。

この時の共有する権利を「持分」と言います。

今回の例では、自宅を母(持分1/2)、長男(持分1/4)、次男(持分1/4)の3人で共有するという分割方法にしたことになります。

 

母が亡くなった時の遺産分割(二次相続)

一次相続を法定相続分で相続された後、お母さまが亡くなった時の二次相続の内容は以下の通りです。

  • 自宅 母の1/2は同居している次男が相続(不動産登記済)
  • 金融資産 母の2000万円は、長男が全部相続

この二次相続の時に、私のところに相続税申告のご依頼を頂きました。

 

二次相続の落とし穴!

大きな自宅は同居している次男が相続しましたので小規模宅地等の特例を使えて相続税の負担はゼロで良かったのですが、問題は大きな自宅の持分です。

 

二次相続後の自宅の持分が問題に…

二次相続後の自宅の持分は以下のようになりました。

  • 長男 父の死亡時に相続した1/4
  • 次男 父の死亡時に相続した1/4+お母さんの死亡時に1/2=3/4

長男は東京で自宅をお持ちで大阪に戻ってくる予定は全くありません。

「長男が一次相続の時に相続した自宅の持分1/4」は、長男にとって全く必要がないので次男に名義を換えたいのですが、名義を換えるには『次男に売る』又は『次男にあげる(贈与する)』しか方法はありません

 

どちらにしても、すごい税金額!

贈与税と不動産取得税ただ、いずれの方法にしても税金の壁があります。

自宅の1/4の評価は2000万円もするので税負担が半端ではありません。

  • 次男に売った場合…譲渡所得税が400万円!
  • 次男にあげた場合…贈与税が700万円!

ただ、兄弟に持分を渡したいだけなのに…。

 

まとめ

相続税専門税理士お父様の相続(一次相続)の時にちゃんと専門家に相談しておくことが重要でした。

例えば、「長男は自宅をもらわない代わりに金融資産をもらう」とか、「次男は家をもらう代わりに長男にお金を払う」といった方法を取っておけば、お母さんの相続後に困ることはなかったかと思います。(分割方法は『遺産分割の方法』をご参照下さい。)

結局、2000万円の長男の持分は少しずつ次男と次男の奥さんに贈与税の非課税枠(110万円)の範囲内で贈与していくことになりました。

10年かかる見込みです…。

金融資産は分けやすいのですが、不動産は登記してしまうとその後に動かすことは簡単ではありません。

『とりあえず法定相続分』というのはトラブルを回避できるという点では良い考え方なのですが、後々問題となることもありますので注意が必要です。