「死んでから相続したら相続税がかかるから、生きてるうちに財産の一部を子供達にあげてしまおう」と思われていたら、注意が必要です。
生前にあげてしまうことを「贈与」といって、贈与にも「贈与税」という税金がかかるのです。
「えっ!?生きてるうちにあげても税金とられるの?」と思われるかもしれませんが、取られるのです。
但し、贈与税にも控除や特例があります。
今回はこの贈与税に関して分かりやすくご説明したいと思います。
贈与とは
贈与とは、財産を無償で与えることを言います。
贈与となるのは、双方の合意がある場合です。
財産をあげる人(贈与者といいます)が「財産をあげましょう」と表明し、財産をもらう人(受贈者といいます)が「はい、いただきます」と表明した時に贈与は成立します。
一方的に「あげます」といっただけでは贈与にはならないのです。
また、単に財産を与えるという行為以外にも「贈与」に該当する場合があります。
それでは、どんな場合が「贈与」にあたるのかを見ていきましょう。
どんな場合が「贈与」になるの?
贈与には主に3種類の贈与があります。
生前贈与
生前贈与とは、生きているうちに財産を他人に与えることです。
合意によって財産の授受をおこなう場合はもちろん贈与ですが、それ以外に、以下のようなケースも贈与となる場合がありますのでご注意下さい。
合意による財産の授受
「この財産をあげましょう」「はい、いただきます」と合意して財産を与える場合は贈与になります。
借金返済の免除
親から1000万円借りていて、返済をしていなかったり、「もう返さなくてもいいよ」と返済免除された場合は、免除された借金の額が贈与されたこととみなされます。
保険金の受取
自分で保険料を支払わずに保険金を受け取った場合も、保険料を支払っていた人からの贈与とみなされます。
低額で譲り受けた財産
1000万円相当の土地を10万円で譲り受けたような場合、差額990万円が贈与されたとみなされます。
対価の無い名義変更
現金などの対価をもらわずに、土地や家屋などの不動産の名義を他人に変更した場合は贈与とみなされます。
定期預金
受取人以外の人が掛け金を負担していた場合は、贈与とみなされます。
その他
その他、贈与税の肩代わりや信託の運用益など、贈与とみなされるものはありますので、正確に確認したい場合は、お近くの専門家にご相談下さい。
死因贈与
死因贈与とは、「私が死んだら、この財産をあげます」「はい、いただきます」と合意して成立する贈与です。
贈与者が亡くなることを条件に、財産を分け与える契約になります。
よく遺言で「○○を息子××に相続させる」という内容の「遺贈」と混同されますが、遺言で書かれたものは一方的に遺言者が表明しているのに対して、死因贈与は合意の上で契約が成立している点が異なります。
また、死因贈与は贈与税ではなく相続税の対象となりますのでご注意下さい。
負担付贈与
負担付贈与とは、何かしらの負担を条件に財産を与える贈与です。
例えば、「自分の介護をすることを条件に、この財産をあげます」や「ローン1000万円を負担するかわりに、時価3000万円の家をあげましょう」といった贈与が負担付贈与になります。
負担付贈与の場合は、負担した金額を差し引いた額に贈与税が課せられます。
先ほどの1000万円負担を条件に3000万円の家を贈与される場合は、差額の2000万円が贈与税課税対象になります。
「私が死んだ後にペットの面倒を見ることを条件に財産をあげます」という場合は「負担付死因贈与」になります。
贈与税とは
「無償でもらったものに税金を払わなければいけない、というのは納得できない!」という方も多いのではないでしょうか。
何故、無償で与えたものに税金がかかるかと言いますと、相続税との関係があるからなのです。
「もう先は長くなさそうだから、今のうちに財産を妻と息子達に全部あげておこう」となった場合、亡くなった後にかかる相続税が課せられなくなってしまうからです。
そうさせないように、贈与税は相続税よりも高い税率が課せられています。
また、後述しますように贈与税は年額110万円まででしたら非課税ですので、相続財産を少なくする相続対策となります。
贈与税はいつまでに支払うの?
贈与税は1年毎に贈与された金額に対して課税されますので、通常は毎年2月1日から3月15日までが申告期間となっています。(確定申告と同じ期間です。詳しくは税務署にお問い合わせください)
申告期間と納税期間が同じですので、この期間内に納税もおこなることになります。
贈与税の基礎控除とは
贈与税には、毎年110万円までの贈与は非課税になるという基礎控除があります。
毎年妻と子供2人に10年間110万円の贈与をおこなっていた場合、3300万円分の相続財産が減ることになり、非常に大きな相続税対策となります。
但し、不治の病となってから、急いで生前贈与を始めるような「駆け込み贈与」を防止するため、相続開始前3年以内の贈与の基礎控除は認められず、「相続財産」として相続税対象になります。
贈与税の配偶者控除とは
婚姻期間が20年以上のご夫婦の場合、配偶者控除というものがあります。
配偶者に居住用の住宅又は住宅を購入するための資金を贈与する場合、贈与金額から2000万円を差し引いた金額に贈与税が課せられます。
住宅を購入するための資金の贈与の場合、翌年3月15日までの入居が条件となっています。
配偶者控除は、先程の基礎控除との併用も出来ますので、その年は2110万円の控除を受けることが出来ます。
申告が必要
配偶者控除を適用する場合、たとえ贈与税がゼロになったとしても申告をしなければいけません。
申告をしない場合は控除が受けらませんのでご注意ください。
3年以内でも適用可能
基礎控除では駆け込み贈与を防ぐために亡くなった前3年以内の贈与の控除はありませんでしたが、配偶者控除の場合は亡くなった前3年以内であっても適用可能です。
ただし、同じ夫婦間での控除は1回だけとなっています。
住宅取得等資金の贈与税の特例とは
平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に父母や祖父母から、マイホーム(増改築なども含む)の購入資金として贈与された場合、一定の要件を満たすときは、非課税限度額まで贈
与税が非課税となります。
適用される住宅の条件や期間などは『「住宅取得等資金の贈与税の非課税」のあらまし 』に詳しく書かれていますのでご参照下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
贈与税は相続税よりも高い税率が課せられていますが、控除や特例をうまく活用することで、大きな相続税対策にもなるとご理解頂けたかと思います。
控除や特例は条件や期限などが細かく設定されていますので、適用出来ると思っていたら出来なかったという可能性もございます。
相続税対策として贈与をお考えの方は、一度専門家にご相談されることをおすすめします。
当センターでも随時相続に関するご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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