「その遺言は無効です!」とならないための自筆証書遺言の書き方5つのポイント

自筆証書遺言の書き方

あなたが2年前から介護をしている母親から「大好きだった仕事も辞めて私の介護をしてくれたんだから、わたしが死んだら財産は姉や妹にはやらずに、あなたに全部あげるからね。遺言書もきちんと書いておいたわよ」といつも感謝されていたとします。

その後、母親が亡くなり、あなたに全ての財産を相続すると書かれた遺言書が出てきました。

が、しかし、遺言書を見た姉が「この遺言って無効じゃない?」と言いだしました。

「えっ?無効?」

そんなことがあるのでしょうか?

実は、こういったケースはよくあるのです。

一生懸命介護をしていたあなたにとっても、あなたへの感謝の気持ちで遺言を書いた母親にとっても、せっかく思いを形にした遺言が無効になってしまうのは本当に残念なことですよね。

そんなことにならないためにも、遺言作成者にはきちんと書き方を知って遺言を書いておいて頂く必要があります。

上の例で母親が書いた遺言は、自分自身で書いた「自筆証書遺言」と呼ばれる遺言書です。

この自筆証書遺言は簡単に作れる反面、法律で定められた要式で作られていないということで無効となるケースも非常に多いのです。

今回は「自筆証書遺言」とはどのようなもので、どのように書くのか、また、有効無効は誰が判断するのかを見ていきたいと思います。

 

自筆証書遺言とは

遺言書には事故等の緊急の場合に書く特別方式を除くと「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類の普通方式があります。今回見ていく「自筆証書遺言」とは字のごとく「自筆」で書かれた遺言書で、紙と筆記用具、印鑑があれば作れます

自筆証書遺言は費用もかからずに簡単に作成出来るというメリットがありますが、反面、法律で決められた様式で作成されたものでない場合は無効になるという、非常に大きなデメリットがあります。

上の例で遺言書が無効になった場合、母親は亡くなった後ですので、当然書き直してもらうことはできません。

無効であっても姉と妹が「これはお母さんが書いたもので、お母さんの意思なんだから遺言書通りにしましょう」と合意出来れば何の問題もないのですが、「この遺言が無効だったら、財産の分け方も私達で決めるのが当然でしょ!」と誰かが言い出せば、遺言書の内容と全く異なる遺産分割の内容になることになります。

ですから、自筆証書遺言を作成する場合は、細心の注意を払って無効にならないように作成する必要があるのです。

 

自筆証書遺言の5つの要件

自筆証書遺言に効力を持たせるには民法で要件が定められています。

民法 第968条
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

【自筆証書遺言の要件1】全文を自分で書く

全文で書く「なんだ、そんなの当たり前じゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの要件を満たさずに無効になるケースが非常に多いのです。

本文を全て自書していれば良いだろうと思って、財産目録がタイプで印刷されていたため、全文自書の要件に欠けているとして無効とされた判例があります。(東高判昭和59.3.22判時1125号103頁)

とにかく「自筆証書遺言」の要件は、全て自書、つまり自分で書くことです。

「目録は見やすいようにパソコンで書こう」なんて余計な事をしてしまうと無効になってしまいますので十分気を付けて下さい。

 

【自筆証書遺言の要件2】日付を書く

日付を書くもちろんこれも自書で書きます。見やすいからゴム印で押しておこうとは間違っても考えないようにして下さい。無効になります。

「思い立ったが吉日!よし!作成日は平成27年11月吉日としよう!」というのも日にちが特定出来ませんので、日付の無い遺言として無効となります。「平成元年11月末日」のように「末日」という記述は11月30日だと特定出来るということで有効とした判例がありますが、やはり日付はきちんと「○○年○○月○○日」と明記することをおすすめします。

 

【自筆証書遺言の要件3】氏名を書く

これも当然自書で書きます。

ここで気を付けて頂きたいのが、必ず遺言作成者の方1名だけが署名するということです。夫婦仲良く遺言を書いて一緒に署名をしてしまうと、「共同遺言」といって遺言が無効になってしまうのです。

民法 第975条(共同遺言の禁止)

遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

非常にシンプルで判りやすい条文ですね。絶対に2人以上の署名はしないようにして下さい。

 

【自筆証書遺言の要件4】押印をする

押印をする押印に使用する印鑑は実印とは規定されていないので、認印でも有効です。

拇印や指印でも有効という判例がありますが、亡くなった方の拇印や指印がご本人のものだと確認できないというケースも多いと思います。

自筆証書遺言はただでさえ有効か無効かを争われる可能性が高いので、押印は印鑑でされるのがよいでしょう。

 

【自筆証書遺言の要件5】加除訂正の方法

もし遺言を書いていて間違った場合、「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ」なりません。この方法を間違えると訂正した部分が無効になってしまいます。(訂正部分が無効になるということで、遺言全体が無効になるということではありません)

他人が勝手に訂正できないよう民法では加除修正の方法を厳格に定めています。加除修正の方法は煩雑なので、訂正方法に間違えや漏れがでてしまう可能性もあります。出来れば間違えたページは書きなおした方が良いでしょう。

 

自筆証書遺言の有効無効の判断は誰がするのか

「遺言に関しては何でも判る!」という一般の人は少ないと思います。

自筆証書遺言を書く時には、本やインターネットで書き方を見て、書かれる方がほとんどではないでしょうか。そのため、要件の不備があり、遺言が有効か無効かを争うケースが非常に多いのです。

それでは、遺言が有効か無効かというのは、誰が判断するのでしょうか?

自筆証書遺言の場合、死後遺言が発見されると、まず最初に「検認」という作業が必要になります。

 

遺言書の検認とは

遺言者が亡くなられた後、遺言書の保管者や遺言を発見した人は家庭裁判所に検認の申し立てをしなければなりません

民法 第1004千四条(遺言書の検認)

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2  前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3  封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

民法 第1005条(過料)

前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

ここで注意して頂きいたいのが、検認とは、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を確認し、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きであって、遺言が有効か無効かを審査するものではないという点です。

検認をせずに遺言を執行したり、家庭裁判所以外で封印のある遺言書を開封したりした場合、行政罰として5万円以下の過料を課せられることがありますが、これは遺言書が無効になるということではないのです。

検認で確認された遺言書が有効だということで相続者みんなが納得すれば、遺言通りに遺産分割をすることになります。

では、「遺言は無効だ!」と相続人の誰かが言い出した場合はどうなるのでしょうか?

 

遺言無効確認訴訟

遺言無効確認訴訟相続人の間に遺言書の効力に争いがあり、話し合いで解決ができない場合、最終的には裁判所に「遺言無効確認訴訟」を提起し、訴訟によって遺言書が有効か無効かを決めることになります。

「仲良く裁判で決めましょう」という訳にはいきませんので、ここまできたら相続人同士、相当もめて、関係もかなり悪化してしまっていると思います。

もし裁判で遺言が無効となった場合、遺言が無かった場合よりも相続人同士の関係は悪化してしまうことも考えられます。

 

まとめ

まとめ自筆証書遺言は費用もかからず、自分で手軽に書けるというメリットがある反面、法律で定められた要式を欠けている場合は無効となってしまいます。遺言書が無効になった場合、遺言書が無かった場合よりも相続人の間でのトラブルが大きくなることもあります。

自筆証書遺言を書く場合は、無効な遺言書にならないように、「全てを遺言者自身の自筆で書く、日付を書く、氏名は自分のものだけを書く、押印をする、間違えたページは全部書き直す」という5点は絶対に忘れないようにして下さい。

必ず遺言書通りに相続を実行したいと思われる方は、『安全・確実に遺言書の内容を実行させたい人は「公正証書遺言」にするべき3つの理由』に詳しく説明している、「公正証書遺言」での作成をご検討されるのもよいかと思います。

 

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