遺言書の書き方と種類

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

遺言と聞くと、便箋に内緒で書いて机の引き出しにしまっておくようなイメージがあるかもしれませんが、自分で書く自筆証書遺言は、書き方を間違えると遺言自体が無効になってしまう可能性があるのです。

ここでは、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いと、それぞれのメリットとデメリットを見ていきたいと思います。

その前に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の両方に共通することを見てみましょう。

 

遺言書に共通すること

新しい遺言を書くことが出来る

遺言書というと一度書くとそれで遺産相続の内容は決まってしまうと思いがちですが、遺言書は何度でも新しい遺言を書く事が出来ます。

後から書いた遺言書が優先されますので、前に書いた遺言書は無効になります。

これは自筆証書遺言でも公正証書遺言でも同じです。

ですから、まずはご自身の思いを整理するという意味で遺言書を書かれるのも良いと思います。

後から考えが変われば、書きなおせば良いのです。

 

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に、遺言に書かれた内容を確実に実現する人のことを言います。

自筆証書遺言にしても公正証書遺言にしても、遺言執行者を必ず指定しなければいけないということではないのですが、遺言執行者を指定しておいた方がスムーズに手続がすすみます。

公正証書遺言の場合、公証人が遺言を作成しますので、遺言の執行も公証人がしてくれるのでは思われる方もいらっしゃるのですが、公証人は遺言を作成するだけですので、内容を実行することはしません。

遺言執行者に関しては「遺言を書くのであれば絶対に指定しておきたい『遺言執行者』ってどんな人?」で詳しくご説明しておりますので、ご参照下さい。

 

それでは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いを見ていきたいと思います。

細かい違いはたくさんあるのですが、メリットとデメリットを考えた場合、主に3つのポイントを抑えると判り易いと思います。

 

遺言作成費用

自筆証書遺言は文字通り「自分で書く遺言」ですから、紙とペンと印鑑さえあれば作成出来ます。

しかし公正証書遺言は遺産の額や相続人の人数に比例して費用がかかります。(詳しくは「公正証書遺言 作成費用」をご参照下さい。)

また、公証人以外に2人の証人が必要ですので、この2人への謝礼も必要になる場合があります。

 

有効な遺言書の作成

公正証書遺言は公証人という法律のプロが法律の要件に則って遺言書を作成しますので、原則として無効になることはありません。

しかし、自筆証書遺言は必要なことが書かれていなかったり、逆に書いてはいけないこと(連名にするなど)が書かれていて、遺言自体が無効になる場合があります。

自筆証書遺言は簡単なようですが、要件を知らないと無効になってしまう危険がありますので、十分気をつけて下さい。

自筆証書遺言の書き方に関しましては『「その遺言は無効です!」とならないための自筆証書遺言の書き方5つのポイント』で詳しくご説明しておりますので、是非ご参照下さい。

 

遺言書を実行する条件

自筆証書遺言の場合、遺言書の内容を実行する前に、家庭裁判所に「検認」という作業の申し立てをして、「検認」が行われなければなりません。

検認の前に自筆証書遺言の内容を執行、つまり不動産登記や銀行口座の解約などをすることは出来ません。(検認に関しては『遺言書の執行に必要な「検認」って何?』をご参照下さい。)

公正証書遺言の場合、公証人が作成した遺言書が公証役場に保管されているので、偽造・変造の可能性が無いので検認は不要です。

相続開始後に、直ちに遺言書の内容を執行出来ます。

 

まとめ

このように自筆証書遺言と公正証書遺言はそれぞれのメリットとデメリットがあります。

安全・確実に遺言内容を実行させたいのであれば「公正証書遺言」、費用はかけずに遺言があることを誰にも知られたくないという場合は「自筆証書遺言」を選ばれるのが良いかと思います。